ヌブラではスカンプックという村に滞在した。峠を超えてカルドン村、カルサル村、ディスキット村、フンダル村と続き、そしてスカンプック村がある。旅行者もこのへんに来ることは少ないらしく、静かで穏やかな土地だった。レーから続く道路は、この辺りになると国境付近ということで、軍用トラックが多い。ミニバスは朝と夕方に、ディスキット方面に出ている。

宿のお世話になったTenzinのシスター、TSEWANG SPALZESさん(残念ながら発音できない)の家、SHAKRAT-PA HOUSEに案内してもらう。車の通りから、トトロの世界に迷い込んだような抜け道を歩いて行き、その家はあった。

来た瞬間から、この場所が気に入ることが直感で分かった。そこにある空気とか光の入り方が僕の心を落ち着かせた。アプリコットの樹にかかるハンモック。裏で飼われているにわとりたち。にゃーにゃーと言いながら寄ってくる猫。たくさんの花がこちらを向いていた。

裏の畑には、キャベツや人参、ハーブなどが育てられている。山の景色が雄大だ。しばらくここに寝転がってみた。

泊めていただいた部屋はこんな部屋で、家の人たちには、何から何までお世話してもらった。お礼してもしきれないくらい。ありがとうって何度言っただろう。窓から差し込む光が綺麗で、思わず写真を撮りまくった。冷え込む土地だけど、温かい毛布のおかげでぐっすり眠ることができた。

アバレ(お父さん)とノノレ(弟くん)。彼は、12歳くらいかな? シャイだけどしっかりもので、家の手伝いをよくしていたよ。夜、年代物のブラウン管テレビで「2012」のDVDを見せてくれた。毎日停電が起こる自給自足のこの土地にも「2012」があって驚いた。確かこの映画の物語では、チベットが水没するのだけど…

ノモレ(妹さん)本当に恥ずかしがり屋さんで、カメラを向けるとすーっと逃げていく(笑) でも時おり見せる笑顔が本当に素敵だった。言葉は通じないけど、現地語で挨拶をするとにっこりしてくれて、彼女の笑顔に癒された。家事を全部手伝っていて、料理から皿洗いまで、鶏や猫の世話もしていた。

庭にはハンモックがあって、そこによく横になってのんびりしていた。時間が止まったかのような(本当に、そう思えた)日々だった。穏やかな風、鳥の鳴き声、そして透き通った光が降り注ぐ。

アチェレが樹から、アプリコットを取ってくれた。甘くて美味しい。大自然が育んだ味だ。見た目は「びわ」でモモのようなテイスト。お腹の調子を整えるらしく、世界共通の果物の味は、異国の旅で疲れを癒してくれる(たくさん食べすぎて逆にお腹壊した人もいたけど、笑)

夕食はヌブラの家庭料理だ。まず野菜スープが出される。美味しい。それから焼きたてのチャパティーと、カリフラワーを中心とした炒め物、ツナを使った料理へと続く。

ツナはどうやって料理されているのだろうか?深い味わい。きっとビールがあれば極上のおつまみになるんだろう。そして、このカリフラワーの料理が美味しくて箸が進んだ(手が進んだ?)。これらのおかずを、チャパティーに包んで食べる。生のニンジンも甘くて新鮮でたくさん食べてしまった。ラダックの料理は全体的に好きだけど、ここで食べた料理は群を抜いて美味しかった。お腹いっぱいになって、眠りにつく。

次の記事で、インド・ラダック最後の記事になる。その夜、僕は宇宙を見る。

2010年インド・ラダックの旅の記事一覧