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Labitで運営している「すごい時間割」ですが、昨年は4月の1ヶ月間だけで、約10万人もの大学生が登録してくれて、今年も新学期シーズンに入って順調にユーザーが増えています。気づいたら登録されている講義データが、サービス開始以来で100万件を超えて、1,010,097件になりました。慌てて本日、ニュースリリースを配信しました。直近のログを見てみても、1日に5,000件ずつくらいユーザーの方が作ってくれていて、いわゆるCGMとして機能しています。利用者の皆さん、本当にありがとう。

【ニュースリリース】
『すごい時間割』講義データが累計 100 万件を突破(2014年4月)
大学生向けの講義情報アプリとして、利用者層は国内 1,104 大学に拡大。

『すごい時間割』は、学生のもっとも身近な行動単位である「時間割」をクラウド上で管理し、友人とのスケジュール共有や、同じ講義の履修者を可視化できるツールアプリとして、2011年10月に正式公開されました。現在、利用者のいる国内大学は1,104大学で、日本全国の四年制大学・短期大学全体の96.7%をカバーしており、もっとも利用者の多い慶應義塾大学では約3人に1人がサービス登録しています。昨年 2013年4月の新学期では、1ヶ月間に約 10 万人の大学生が登録し、2014年度も増加中です。登録ユーザーの男女比率は、男性が 53%、女性が 47%、利用者のうち約 45% が、Facebook認証によるアカウントです。

ところで、僕はメディアや取材のときに時々喋ってたかもしれませんが、「Tech-Education」って、本質的には一体何なんでしょうかね?(笑)中学校からのプログラミング教育なのか、大学機関がもっとスマホやWebツールを活用して授業コラボレーションを進めるICT教育の促進なのか、遠隔による国際的なグローバル授業だったりとか(慶應はよくアジアの大学と英語で遠隔授業やってて、面白いです)、それとも誰かスタートアップのすごいエンジニアの人が作った教育アプリが普及して、それがデファクトスタンダードになるとか。幼児教育、小学校教育、中学校教育、高等学校教育、大学教育といった具合に、ちゃんとセグメントして分けて考えないと、ごちゃごちゃになりそうですね。例えば幼児教育だと、IVPが出資している「スマートエデュケーション」がすごい勢いで業績伸ばしてますし(昨年末、IVPに加えて藤田ファンドが5億5000万円を出資)、小中校の教育だとDeNAがはじめた「アプリゼミ」、高校生(受験生)向けにはリクルートの「受験サプリ」がガンガンCM打っててすごい勢い。僕もプレゼンなどにお呼びされて何度かお世話になっている、水野さんがやっている「Life is Tech」も素晴らしいコンセプトで、活動規模も年々大きくなっていて、先日サイバーエージェントと合弁会社が設立されていました。セグメントや手法は様々ですが、どれもインターネット的な時代の教育サービスとして、予算が十数億円で5年後に回収できればいいくらいの規模の事業投資です。世界規模で、Tech−Educationみたいなキーワードが叫ばれている感じですが、日本でもこれからいよいよ、って感じでしょうか。旧来の予備校とか通信教育とかの市場が、IT関連の成熟した企業によってリプレースされていく姿が、これから3年くらいで眺められるのかなと思います。教育は20兆円を超える巨大市場ですからね。

それで僕はというと、日本の大学教育を今よりもちょっとだけオープンにできたらいいなぁ、と思っています。といっても、単に履修者同士でテスト対策プリントを共有するみたいな機能は、すごい時間割の中には、入るか分かりません(要望は多いけど)「楽単を探す」とか「単位が取りやすく」とかキャッチコピーとしては必要かもしれないけど、そうした安易な発想ではなくて、このプロダクトには「教育を前進させたい」という、アイデアの発案ときから3年間経った今もなお続いている「設計思想」があります。これは、グロースハックとか広告マネタイズとか、スタートアップ企業が手がけるアプリで考えなければいけない、めっちゃたくさんある複合要素の中でも、すべてを凌駕するべき根本的な考え方です。

せっかく数十万人くらいが使ってくれるようなサービスの土台を作れたのだから、今のカジュアルすぎる教育体系をそのままスマホアプリで再現するんじゃなくて(マス層には受け入れられないかもしれないけど)、新しいチャレンジとしての、集合知みたいなものを作れたらいいなーと、ときどき妄想しています。たとえばノート共有ではなくて、授業ごとに自動的にWikiの雛形が作られているとか。WikiPediaって便利で、みんな毎日のようにその利便性を享受してますよね。教育においても、講義単位でWikiページがあってもいいかもしれない。授業で解説されたことについて要点を書き込んだり、他のサイトの考察をキュレーションして読み込んだり。それはクローズなコンテンツではなくて、全世界に公開される。iTunes Uとか、世界的に教育をオープン化して、シェアしようという思想のトレンドがある以上、もう後戻りできないのかもしれません。チームラボの猪子さんの言葉を借りると、「(アートとかが社会に与える影響について)そのうち勝手に良い方向になると思うんだよね。」「なぜなら、”社会は前進したい” と思っているから。」─ 記法はMarkdownベースで、スマホからも使いやすくできたらいいな。「Wikiらしい」文章書くって、文章リテラシーの向上においても重要だと思うんです。慶應とか早稲田でさえ、日記ブログみたいな文体のレポートがたくさん提出されて単位が来るような現状、日本はこのままでいいのかって思うこともしばしばです。Wikiには「事実」や「様々な立場の見解、考察」が書かれているだけであって、履修者はその事実や他人の考察をもとに、自分なりに「思考」して「アウトプット」する。それが教育として評価されるような仕組みになったほうが、地頭の良い大学生が、少しは増えるんじゃないでしょうか(あくまで仮説の一つです)。僕が在籍しているSFCでは、2009年頃の早くから授業のコミュニケーションにTwitterを取り入れたり(今はもうやってないっぽい)、Facebookページや、テクノロジー系の講義ではGithubを使ってたりしますが、普通の文系授業においても、Wikiに積極的に書き込んでいる人が成績に加点されるとか。このへんは昨日思いついたばかりのアイデアで、社内で共有したり細かくバックログに落としてるわけでもないので、このパラグラフは忘れてください。

100万件を超えて日々増えている講義情報ですが、これらを統計データ的に扱うとすると、たとえば「1年生でこの授業を受けている人は、2年生になったらこんな授業を受けています」といったレコメンデーションの具体的な利用シーンや、大学・キャンパスごとに曜日と時限で集計したユーザー数でプロットしたヒートマップやグラフにより、キャンパス内の曜日・時間帯別の「賑わい指数」などが測れたりします(実際に早慶旧帝大などで試しに作ったら、面白いデータが得られて、慶應大学では火曜2限の時間帯が最も人が多くて、青学では月曜3限、といった具合に)。

データ分析というのは、目の前に、無機質な大量の数字群があったとして、それを加工して何らかの「価値」に変換するプロセスが必要なんですが、具現化する上でそれなりの技術力は前提としつつも、結構センス的な部分が求められる領域だと思っています。数字を、どんな角度から分析するかみたいなことは、理系の役割って言い切るのではなくて、文理融合しつつ考えるべきことかなと。SFCの2014年の特設科目(春学期)には、「大規模データ処理」とか「自然言語処理論」とかあるんだけど、数百人の履修希望が出るなど、すごいニーズだなと感じてます。僕は今後1年間、この領域をちゃんと勉強して身につけたいとおもってます(今まで遠回りしすぎました)。先程の例では、キャンパスの賑わい度っていうのは、ちょっと見方を変えると「公共交通機関の混雑具合」として可視化して、社会的意義の側面も見いだせたりするので、ただの数字の並びをずーっと眺めつつ、どうやったら「この世に、これまで存在しなかった価値ある情報」に変換できるのか、その可能性については、いつも考えています。

だらだら書いてしまいましたが、主要なKPIの1つとして、100万件に達したという一つの数字の節目に、アプリを使ってくれた皆さま、最初の頃からずっと応援してくれる皆さんに、感謝しています。

【ニュースリリース】
『すごい時間割』講義データが累計 100 万件を突破(2014年4月)
大学生向けの講義情報アプリとして、利用者層は国内 1,104 大学に拡大。