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鶴田浩之の個人ブログ | since 2005

Month: 4月 2011 (page 1 of 3)

本が、完成した。

本が、完成した。これほど言葉というものに対峙した一週間は、初めてだったかもしれない。僕のなかで精一杯、やれるだけのことはやりました。束見本ができて手にもったとき、すごく重みを感じた。それぞれの発信者のメッセージが、ぎゅっと詰まっている。1ページずつめくるごとに、読む人それぞれにとって異なった感じ方があると思う。あとは、読んでもらった人がどう思うか、それはわからないけど、僕はもう、やれるだけのことはやりました。電車の中でゲラを確認して、いつも涙が止まらなくなった。

言葉というものは、誰かにとってはこの現実を前に、ただただ虚しいだけの存在かもしれない。「大丈夫」や「がんばれ」というのは結局のところ無事なひとたちの勝手な妄言でしかなくて、遠くでは、だれかが傷ついているのかもしれない。いろんな可能性を、ずっと考えてた。あの日あのとき、誰もが頭に浮かべた存在は、何だったのか? それを、深く、深く、ずっと追求した。何時間も、それを何日も、たった二行の言葉のために、悩んだ。言葉が、頭の中に溢れかえった。ときどき難しく考えすぎた。何十回もぐるぐるとまわったあとに、いちばん最初に戻ったりもした。そのうちまったく新しいところから出てきて・・・そんな日々だった。

最後の2日間は、一日の変わり目がどこにあるかよく分からない生活だった。講談社に泊まりこみで16時間、そのあと印刷所で8時間、夜通し作業をした。「ここまで来たからには、最後まで妥協せずやり遂げるしかないね」 編集スタッフみんなで、責任を感じる。妥協は、できない。本の帯に、当初入る予定だった「NHKや読売新聞で紹介」といった広告文(上の写真の黄色いところ)は、責了の日に、急遽ぜんぶ取ってもらった。出版社的には、売上が落ちる英断。この本は、帯も含めて、10年後も20年後も残っててほしい。外した広告の代わりに、僕の言葉をひとつ入れてます。本を手にとって、ぜひ見てください。

3月下旬の企画から4月12日の校了まで、わずか2週間で原稿執筆から構成、デザイン、全部やった。Webサイトが誕生して、約1ヶ月後の本の完成でした。講談社の編集者の方をはじめ、世界各地の翻訳ボランティアの方、デザイナーさん、手伝ってくれた友達、みんなのおかげです。本を編集する中で、Special Thanks欄が少しずつ増えていったことが、うれしかった。そう、このプロジェクトは現在進行中で、いまもいろんな協力者が増え続けている。みんなが、自分にできることを探し続けた一ヶ月でした。「本当に大切なものはなんだろう?」みんなが、自問自答した。答えが出せずに悔しいという人も、周りにいっぱいいた。でも、いまは、たぶんきっと答えは出なくてもいい。ゆっくりでいい。本をつくって、気持ちを整理することが、とても時間がかかることなんだ、と。僕も、まだ答えは出てこないた。

本だからこそ、伝えることのできる「温度」というものがあったと、そう感じる。

とにかく、できあがった。寝れる。おやすみなさい。

『PRAY FOR JAPAN – 3.11 世界中が祈りはじめた日』2011.4.25

代々木公園/花見

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