2017年になったということで、Labitの社員全員で、今年の個人目標を発表しあったり、個人としては手帳(アナログ手帳だ)に目標や、今年やりたいことをザッと書いてみた。実際に書き出してみると、会社のこと/具体的な目標を除くと、「週2回ランニングする」だとか「朝6時に起きる」だとか、だいたい去年や一昨年と同じ内容の、つまらないリストである。ここから推敲して目標リストのバージョンを上げていく必要がある。
僕がいつも考えている計画~目標達成のプロセスについて、その考え方を記しておきたい。まず前提として、(1) 無謀な目標は立てない、(2) 早寝早起きといった「習慣」レベルのものを目標にしない。習慣の前には「先立つもの」が必ずあり、それが目標となるべきだ。よく言われるのは具体的な数値だったり、達成というものがフラグとして存在するものである。「早寝早起」をやりたければ、なぜその習慣を作りたいのか? その「なぜ」の先に、自分が本当にやりたい目標があるはず。朝の時間を増やすことで何か新しいコトをやりたいのか?、それとも規則正しい生活によってコンディションを整えて、仕事の成果を上げたいのか?
たとえば、本当にやりたい目標として、今年こそはiPhoneアプリ開発にチャレンジして10万人くらいに使われたいとする。オフィス以外でプログラミングを楽しむ時間を確保する必要があるから、朝の3時間を有効に使おうと思うだろう。加えて、せっかくだから話題の新しいライブラリを使ってみようとか、「モダンな技術をウォッチし続ける」といった習慣も同時達成できる。だから朝6時に起きる。シンプルな話。
そして、明文化した目標よりも先立つものがあり、それは脳内で描きあげる映像(イメージ)だと思う。対象とするものを集中して強くイメージすることができるか、目標達成するときの映像が頭の中で浮かぶか。わくわくしたり、頭に刻みこまれて離れないようなものであるか。映像が思い浮かばないにも関わらず、「週2回ランニングする」と書いているだけでは、3日坊主ではなくともたぶん10日後くらいには忘れてしまっている。
僕の場合、映像として浮かびやすい情景を、目標のなかに含めている。
「今シーズンに出場するトライアスロン・レースのオリンピックディスタンスを、3種目2時間45分以内に完走し、レース後に最高に美味いビールで乾杯することはかけがえのない幸福感であると強く想像できるから、そのためにベースとなる身体能力、走力を磨くために週2回ランニングする」
長いのでもう少し短くする必要はあるだろうが、でも思い切ってこれくらい具体的な文章(そう、リストではなく文章である)として目標を記し、A4用紙いっぱいに書いてデスクに貼っておけば、行動につながると思う。何のために(誰のために)、どんなことを、どのようにして行うかをそれぞれカードに記入してみる。こうしてみると、まるでアジャイルソフトウェア開発の手法の一つ、ユーザーストーリーマッピングのようである。
そこで思いついたのがタイトルにある「ストーリーによる目標設定の考え方」。
上記の目標設定を、ストーリーとして詳しく落とし込んでみると、こんな感じだ。
「トライアスロンはスポーツとして自己満足に過ぎないが、競技人口が少ないがゆえに、他者から珍しがられたり、少し自慢できるという下心があるのも本音だろう。尊敬する人たちは大抵何らかの形で体を鍛えているし、レース会場では彼らとフラットな関係で話ができる機会でもある。目標に向かって工夫したり鍛錬するプロセスは心地良いものだし、トライアスロンというスポーツは、都会人、そして何より飽き性である僕にとっては気が向いた好きな種目から練習ができて、自分に合っている。万が一トレーニングの習慣に挫折して、駄目な自分自身を知ったとしても、レース当日だけでも遊びとして参加するのも悪くない、という逃げ道だってある。なにより完走には中毒性がある。」
ストーリーから目標を紡いでいくのはとても気持ちがいい作業だ。この想像力を駆り立てることっていうのが、「夢」というものじゃないだろうか。情景を描こう。
他にもこんな文章的な目標も書いてみよう。
今やっている仕事から得られる喜びは、純粋に利用者が増え続けていくことや、利便性を感じてくれていることに対する、自尊心の高まり=社会的欲求を満たせていると感じるからだろう。この気持ちを個人的なものから解放し、会社=チームとして共有すると、きっと気持ちがいい。僕個人は、目標に向かって数字が積み重なっていくときの、あの躍動感や、ふと思いふける恍惚感を知っているからこそ、それを会社の仲間と分かち合いたいという気持ちが、誰よりも相当強い。だから起業家という仕事を通して、世界観を語り、目標を小さなレベルに分解しながら、一つ一つ成功体験を共有していこうとしている。
英語だったら、僕は今年こんなふうにストーリーから目標設定を描いている。
2017年は、ずっとコンプレックスだった英語力を底上げするにはベストなタイミングだと思う。なぜなら、3人の外国籍メンバーが会社にジョインし、彼らとのシェアハウスも楽しいから。鳥貴族で一緒にビールを飲みまくった居酒屋トークで同じ笑いのツボが分かるようになれたら、なんと楽しいことだろうか!開発チームの一人として、会社にいる外国籍メンバーと全て英語によるミーティングが出来るようになろう。また、大きな目標を持つ起業家として避けて通れない、投資家への6分以内のピッチトークと質疑応答を、英語でスムーズに出来るようになりたい。それを達成したときの自分は、きっと次のステージに進むことができる自信と度胸が付いているだろうし、結果的にそれはすべて事業や会社の成長のためになる。この気持ちを毎日思い描ければ、習慣として週数時間の英語の勉強を1年間続けられるはずだ。
僕の例は少し大げさかもしれないけど、毎年の目標設定がマンネリ化している人は、試してみてはどうでしょうか。もちろん毎年、こうした考え方は変わっていくので、あくまで原寸大の僕自身が今どのような考え方で、目標を決めて、それに向かって取り組んでいるか、参考程度に受け止めてもらえると幸いです。
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— 鶴田浩之 | Labit (@mocchicc) 2017年1月6日